沖縄本土復帰の日にSDGsを考える 講演会を行いました

沖縄本土復帰の日にSDGsを考える 講演会を行いました

資本主義の父といわれる渋澤栄一氏は、著書『論語と算盤』で、道徳と経済は不可分という観点から、社会貢献と利潤追求の両立を説きました。
現代、SDGs として議論されている持続可能性の先駆けとなる考え方です。
その渋澤栄一氏の5 代目子孫であり、ESGおよびステークホルダー資本主義に関する日本の第一人者である渋澤健氏を迎えて、2023年5 月15 日、「沖縄本土復帰の日にSDGs を考える」と題するイベントを開催いたしました。
本土復帰から50 年が経過し、経済、社会、環境など、さまざまな問題を抱え、他県に比較して厳しい状況下にある沖縄が、いかにして持続的発展していけばよいのか。
沖縄を代表する経済人、若手経営者との議論を通じて、その方向性を探りました。

日本らしさもありつつ、異国情緒もある沖縄

渋澤氏は、「SDGsは日本が最も浸透していると思うが、ローカライズされており、自分の目の届くところだけの取り組みが多い」と語り、沖縄における社会課題・経営課題、それに対するSDGsの取り組み、そして今後の展望について議論を進めていきました。

モデレーターを務めた渋澤健氏

安里氏からは、沖縄は観光で生きていこうというスローガンだけで、まちづくりに反映されていないという課題に言及し、観光客と住民がゾーニングされているハワイの成功例を紹介しました。

パネラーの安里繁信氏(左)と平良修一氏(右)

また、「沖縄は日本らしさもありつつ、異国情緒もある」と語った上で、「世界中に沖縄を理解してもらうことで、日本の懐の深さも理解してもらうことができる。
情報発信の拠点の役割を果たしたい」と抱負を述べました。
平良氏は、日本、中国、アメリカから入ったものが混ざっている沖縄の独特な街並みについて触れ、その多様性を前面に出してアピールしていくべきだと語りました。
また、琉球王国は世界と交流して生きてきたが、外の情報を取らない沖縄県民が増えたことが課題となっていると指摘した一方で、沖縄の誇りを持って行動する若者が増えてきたので、今後の発展に期待していると述べました。

「一滴一滴が大河になる」という合本主義

第2部では、渋澤健氏による「沖縄とSDGs」と題した講演が行われました。
講演の冒頭、渋澤栄一氏について「日本の資本主義の父といわれるが、本人は資本主義ではなく、合本主義という言葉を使っている」と語りました。
「一滴一滴が大河になる」という合本主義に基づき、銀行をはじめ、約500社の会社設立に関わったのです。
「一滴」とは、金銭だけではなく、一人一人の思い、行い、人的資本のしずくを指します。
それが集まって大河となり、新しい時代を切り開くというのが、栄一氏が描いていたビジョンでした。
SDGsも、1人ではできません。人的資本、金銭的資本が集まってこそ、解決できます。
そういう意味で、合本主義とSDGsはシンクロしていると語りました。

SDGsの実現に必要な「と」の力

また、渋澤氏は『論語と算盤』の中でとても大切なメッセージは、「と」の力であると述べました。
「か」(or)ではなく、「と」(and)であるということです。
「か」の力は、存在しているものを比べて進めるので、新しいクリエーションは生まれません。
「と」の力は、相いれないものを合わせて、新しい価値をつくるのだと指摘しました。
SDGsは高い理想で、ともすると手が届かないので諦めたくなりますが、現在から飛躍して未来とつなげることが重要だと語りました。
関係なさそうなものを合わせて新しい価値をつくるには、まさに「と」の力が必要だということです。
さらに、自身も委員を務める岸田政権の「新しい資本主義実現会議」など、政府系委員会や官民合同ミッションなどでの活動を紹介。
特に「新しい資本主義」とは、インクルーシブな包摂性資本主義であるとし、SDGsの「誰一人も取り残さない」という基本理念にマッチしていると評価しました。
そして、これからの50年は、グローバルサウスの10~30代が主役となっていくので、日本の同世代が彼らとつながることで、新しい価値観、新しい成功体験をつくれる可能性があると指摘しました。
最後に、渋澤氏は次のように締めくくりました。

昭和時代の成功体験は、国内で作ったものを世界に輸出するメイド・イン・ジャパン、平成時代の成功体験は、日本企業が外国の土地で生産するメイド・バイ・ジャパンでした。
これからの時代は、日本と共にSDGsを通じて持続可能な社会を世界中につくっていこうという、メイド・ウィズ・ジャパンになるべきです。
これは沖縄も同様です。沖縄だけが良ければいいというのではなく、メイド・ウィズ・沖縄で、世界中を豊かにしていくことが、これからの50年間に求められるでしょう。

エンターテインメントでの優位性に期待

第3部は、那覇市副市長 古謝玄太氏をモデレーターとして、「沖縄若手経営者に聞く、今後の成長課題と沖縄での起業家育成」と題するパネルディスカッションが行われました。
パネラーとして、株式会社ディーズプランニング 代表取締役 義元大蔵氏、株式会社サンミュージック 沖縄 代表取締役 嘉手苅生佳氏が登壇しました。

モデレーターを務めた古謝玄太氏

古謝氏は、沖縄は海に囲まれた亜熱帯性気候だという「地理的事情」、琉球王国に始まり、戦後は米軍の下にあったという「歴史的事情」、米軍施設が集中しているという「社会的事情」が、ネガティブに捉えられていると指摘し、これを逆手に取って優位性にするべきだと語りました。
海に囲まれた亜熱帯性なので独特の空気感があり、本土とは別の歴史をたどってきたからエンターテインメントの素地があり、英語が周りにあふれているので英語を話せる人材ができるからです。
破壊的に何かを起こすよりも、これまで築かれたことを生かしていくことがSDGs的な発想ではないかと投げ掛けました。

パネラーの義元大蔵氏(左)と嘉手苅生佳氏(右)

20都道府県でステーキ店を展開している義元氏は、エンターテインメントでは沖縄の知名度はナンバーワンだと実感しているので、この分野を伸ばしていけば、沖縄はもっと活性化していくと語りました。
また、今、那覇空港が物流のハブにはなっているが、今後は人材に対してハブアイランドになれればいいと提言しました。
沖縄で育った人が気軽に外へ出ていき、外の人も気軽に沖縄に来るようになれば、経済が回っていくと述べました。
嘉手苅氏は、琉球時代から歌と踊りと宴の3軸をテーマにしてきた沖縄には、エンターテインメントでの優位性があり、ポテンシャルが高いと語りました。
その上で、沖縄の若者に夢の選択肢を増やすためにも、エンタメスクールに通うための交通網を整備してほしいと訴えました。
現在では移動コストが高く、チャンスが失われる若者たちが多いといいます。
50年先の沖縄をエンタメ業界の聖地にしたいと、抱負を熱く語りました。

この記事は下記サイトからの転載です。